『発注』と『リテイク』・その2

(前回に引き続き今回もアイキャッチ画像と本文の内容はほぼ無関係です)

前回のエントリーからの続きです(´・ω・`)

仕事を受ける立場の側の方から言わせていただくと、発注されるクライアントさんの方にも、ぶっちゃけ言葉は悪いけど「当たり外れ」があります。

たとえば、最初にクライアントさんから発注してもらった時に、「こういうのをお願いします」という指示や要望をいただくわけですが……。

「なるほど、こういうものが欲しいんだな」というのがすぐに伝わるように、要点をおさえてわかりやすく明確な指示を出してくれる「当たり」なクライアントさんもいれば、

中には、話を聞いていてもどういうものを求められているのか、さっぱり要領を得ない指示をする人や、そもそも本人も完成形が見えていないのか、全く指示がなく「キミに任せるから」と丸投げしてくる(そのくせ納品した成果物が気に入らないとダメ出しはしてくる)人、最初の説明から時間が経過すると話や要求がコロコロ変わる人など、正直しんどいクライアントさんもたくさんいます(´・ω・`)

仕事を請ける僕自身の、理解力やコミュニケーション能力の乏しさもあるのかなとは思うのですが、それでもそういう類のクライアントさんに当たってしまうと、ものすごく辛い仕事になってしまうことが多いです。

それでもまだ、リテイクの際に、別料金としてその分もギャラが保証されていれば無駄な仕事にはならないんですが、大抵はリテイク分の作業費まではなかなか請求できないケースが多いです。
「お前がこちらの要求するものを作れないからリテイク出すんだ」といわれてしまえば、それまでですしね。
(もっとも、本当にそういうことを言ってくるようなクライアントさんとわかったら、その時点で、さすがにこちらも仕事を降ろさせてもらいますが……)

まあ、それくらい、フリーのクリエイター稼業の人間にとって、「リテイク」というのはストレスです。
それがまだ、自分でも納得のいく理由によるもの(作り直すことによって、よりその仕事の結果がいいものになるとわかる場合)なら、それでも頑張りますけどね。

過去に僕が請けさせてもらった仕事でひとつ、ものすごいトラウマになっている仕事があります。
2003年ごろに引き受けた、某変身ヒーロー物のアドベンチャーゲームのシナリオのお仕事だったのですが……。

そのお仕事では、プロデューサーの方が平成仮面ライダーシリーズの大ファンで、そういう感じのゲームを作りたい、ということで、登場人物から変身するヒーローのデザイン、敵側のモンスターから必殺技、背景世界の設定まで、既に細かく作られた状態で、この設定でお話を考えて下さい、という内容でした。

そこで大阪にあるその制作会社さんに出向いて、会社の近くの喫茶店でそのプロデューサーさんとアレコレ打ち合わせをして、出てきたアイデアを叩き台にプロットを作っていったのですが……。

最初こそ好感触な感じだったのですが、だんだん「何だかおかしいぞ?」という感じになってきたんですよね。
出すプロット出すプロット、どれもなんだかいい返事をもらえない。

じゃあ、具体的にどこがどうよくないのか、とプロデューサーさんに聞いても、「しっくりこない」とか「こういうものが欲しいんじゃない」みたいなザックリした返答しか返ってこない。
じゃあ根幹から整理しましょう、ということで「この作品でテーマに据えたい要素は、何でしょうか?」という話をしてみると、プロデューサーさん曰く

「この作品のテーマは、愛です。
 愛は一瞬で、永遠なんです」

みたいなことを言われて、( ゚д゚)ポカーン としてしまいました。

っていうか愛って一口に言うけど、いろんな形の愛がありますよね。
んでもって愛は一瞬で永遠とか言われても……。

「よくわからないんですが、どういうことでしょうか」と、改めて聞きなおしてみると、
「やはりまだキミは若いから、そこまで理解できないかな」みたいなことを言われてしまいました。

いや、それから14年たってオッサンになった僕にも、未だにさっぱりわかんないんですが(;゚Д゚)

「こりゃダメだ、こっちでどうにか考えて形になるようにするしかない」と、もうとにかく頑張ってはみたんですけど……

新しいシーンを書けば「こんな背景まで作る予算はないからこんな場所をストーリーに出さないでくれ」といわれて却下されたり、
突然「こんなキャラを考えたから話に入れてくれ」と、最初の打ち合わせの時には全く想定になかった(そしてストーリーの根幹にはどう考えても無関係な立場の)女性キャラの設定を送ってこられたり、
サブキャラが所属する組織の名前をどうしますか、と聞いたら、何でもいいと言われたので、こっちで考えたら「キミ、センスないね」とボロクソに言われたり。

(ちなみに、今の僕がそういうこと言われたら、その時点で「じゃあセンスのある方を別に雇ってください」と仕事を降りちゃうと思います。「センスがない」って、作り手の感性そのものを否定する最悪に失礼な言葉だと思うので)

何を書いても気に入ってもらえず、どうすればOKが出るのか、真っ暗な迷路を、見えない正解を探して手探りで延々とさまよい歩くような感じでずーっと仕事していて、そのプロデューサーさんがメッセンジャーを送って来たら24時間昼夜問わずいつでも対応しないといけない(寝ててすぐ返事ができなかったら文句を言われる)

あげくギャラも時給に換算したらコンビニのバイトの半額以下
「予算がない」がプロデューサーさんの口癖だった。そんなことを外注スタッフである僕に言われても……

さすがに精神的にも肉体的にも追いつめられて、とうとう僕もブチ切れてしまい、プロデューサーさんと大喧嘩してその仕事を降りました。
最後には「もうこの業界で仕事できなくしてやる」とかそのプロデューサーさんに言われましたけど……。

今なら「クズが何言ってやがる」と鼻で笑い飛ばすところですが、当時の若くてウブで素直だった(笑)僕は、自己嫌悪と無力感から物が書けなくなってしまい、長いスランプに突入してしまいました。

……で、そのゲームはというと、それから3年くらい経った後で、僕の代わりに別のシナリオライターさんが雇われてどうにか発売されたのですが、当時の僕が苦しんで書いてボロクソにけなされたプロットが七割方そのまま使われてて、そのくせプロットの流れをなぞるだけで、登場人物の心理描写などが全く掘り下げられていない、やたら文章だけは衒学的な(シナリオライターが自己満足で難しい言葉とか回りくどい言い回しをやたら多用している)、クッソつまらない出来の作品になってしまっていて、案の定大コケしました。
(完成品のその出来の悪さを見て、ようやく「あの仕事は自分が悪かったんじゃなくて、プロデューサーがアレすぎただけだったんだ」とスランプから立ち直れた次第)

というか予算がない予算がないと言いながら、自分の好きな声優に声アテさせて高い金払うんだったら、それより先に肝心のシナリオライターにちゃんと金払えよ。

と、思わず過去の仕事の愚痴話になってしまいましたが。

何が言いたかったかというと、それくらい、仕事を発注する側がちゃんとした指示を出してくれず、是非の判断も一貫していない相手だと、延々よくわからないリテイクを繰り返されて地獄を見る羽目になる、ということですね。
そういう人の下で働かされるスタッフは本当に気の毒だと思います。
まだ僕みたいに、フリーでやってる人間なら、「最後までやります」みたいな契約書でも交わさない限り、さっさと縁切りできるだけ有難いですけどね……。

(こういうことを書くと、無責任だと思う人もいるかもしれないけど、責任というのは果たすべき相手と仕事にこそ果たすべき意味があると僕は思っています。ダメだこりゃ、と思った取引相手や仕事にいつまでも囚われ続けるのはいいことじゃないな、と心底学びました……)

もうちょい続きます(・`ω´・)ノ

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