僕はあまり声優さんとかスタッフさんとかに拘ってアニメを見たりはしない方なのですが、アニメ監督で最もファンな人といえば、川尻善昭さん。
川尻監督の作品で最初に観たのは『迷宮物語』という3話構成のオムニバスアニメ作品で、その中の一つ『走る男』というエピソード。
この時の印象は、「なんかすごいけど、絵柄が怖いな」という程度のものでした(´゚艸゚)∴ゴメン
で、次に観たのが、こちらも僕の大好きな作家、菊池秀行の同名の伝奇アクション小説を映画化した『妖獣都市』。
これがね、菊池秀行のダークでエロくてキモくてハードボイルドでかっこいい世界観に、川尻監督の作風がピッタリ合ってて、ものすごく.。゚+.(・∀・)゚+.゚カコイイ!!んですよ。
予告だけでも繰り返し見ちゃうレベル。
それ以来、川尻監督の作品は『魔界都市《新宿》』『ゴクウ』『OEDO 808』『獣兵衛忍風帳』『バンパイアハンターD』と、大抵チェックして観ていたのですが……。
どうしても観たくて、でも中々どこのDVDレンタル店にも置いてなくて、観れずにいたのが、現時点での川尻監督の劇場アニメでは最新作の(それでも2007年の作品だからもう10年前か)、『ハイランダー・ディレクターズカット版』。
もう何年も前からずっと探していたんですけど、ようやくソフトを入手することができまして、念願かなって観れたわけです(≧∇≦)/やったね!
で、このハイランダー、元はラッセル・マルケイ監督・クリストファー・ランバート主演の実写アクション映画『ハイランダー/悪魔の戦士』を原作としているんですが、僕はこっちをまだ観ていないので、あまり内容を知りません(´゚艸゚)∴
設定や主人公の名前などは同じっぽいですが、かなり内容はアレンジされているみたいですね。
主人公コリン・マクラウドは、かつてローマ軍と戦ったケルト族の勇者だった男。
ローマ軍の指揮官・マルカスによって仲間たちと恋人を殺され、ただ一人復讐を誓ってマルカスに挑むも、力及ばず殺されてしまう。
しかし、偶然にも首を斬り落とされない限り永遠に生き続ける不死の存在となったコリンは、同じく不死者であるマルカスを殺すため、様々な時代、様々な国へと彼を追い続けては挑み、その度に敗北を繰り返してきた。
そして近未来(劇中での現代)、謎のウイルスの蔓延によって崩壊したニューヨークに現れたコリンは、ニューヨークを支配している男が探し求めていたマルカスであることを知る……。
という話なんだけど、うーん……(´・ω・`)
演出とかはやっぱりカッコいいんだけど、今回は脚本が川尻監督本人じゃなくて、デヴィッド・アブラモウィッツという、アメリカのTVドラマ方面の脚本家さんが書いているらしくて、なんかいまいちお話が面白くない。
メインとなる現代での話の合間合間に、コリンとマルカスの因縁を描く過去の回想シーンが頻繁に入って来る構成なんだけど、どうもそれがメインとなる現代の話の流れを途中でぶつ切りにしている印象で、テンポも悪く感じる。
また、過去話自体もひねりがなくストレートすぎる内容(仲間が殺されました、恋人も死にました、自分も殺されて不死になりました、みたいな感じ)で、現代での出来事に関わるような謎とか伏線のようなものも特になく、凝った構成にしてる割には「これはどういうことなんだろう?」と観客を引き付けるような魅力に欠けている。
『首を斬り落とされない限り永遠に生き続けなければならない』という不死者の設定がこのお話の一番面白いところで、テーマに直結する部分でもあると思うんだけど、それも何だか活きてない。
永遠に生き続けるということは人によっては苦痛でもあるだろうし、不死者となった人間は、いろんな物を見て経験を積み重ねた分、良くも悪くも、常人とは物の見方も価値観も変わってくるものだと思うんだけど。
主人公コリンには2000年もの時を生きてきた割には、キャラクターにその人生の重みがあまりなく(単に不愛想になっただけ)、あまり人間的には成長しない単なる復讐バカ(でもマルカスにはあっさり負ける)でしかない。
劇中終盤、ようやく自分以外の者のために戦う意味を見出して少し成長するんだけど、2000年もの間生きてて今ようやくかい? とツッコミたくなります(´・ω・`)
敵役のマルカスも永遠の命に倦んでいる描写はあるものの、やっていることは北斗の拳のシンのような程度の低さ。
一応、ありし日のローマを自分で蘇らせたいという目的はあるみたいなんだけど、だったらウイルスばらまいて人を苦しめるより、人生の時間はたっぷりあるんだからちゃんと街の人々を統治しろよ、と(´・ω・`)
お話上の時間経過としては2000年というものすごく壮大なスケールのはずなのに、キャラクターやお話がすごく深みがないというか、いまいちなんですよね……(´・ω・`)
最後も、あれだけ戦っても全く勝てなかったマルカスに、いきなりクリティカルヒット出したようにあっさり勝っちゃうし(尺の都合?)、ウイルスばらまかれてあわや市民みんな全滅か、と思われた状況も、マルカスを倒した時に吹きだした生命エネルギーで中和されたというご都合主義展開で解決し、そしてマルカスが死ぬとなぜか突然敵の本拠地が崩れ出して壊滅するというお約束。
もうちょっと深く、不死者であることの悲哀とか、永遠の命を持ちながら戦う意味とか、テーマを掘り下げられたらもっと面白くなっただろうに。
あと、川尻監督作品はアメコミのような陰影のきつい絵柄が特徴の、劇画調のキャラクターデザインなので(そしてそこがいい)、ある程度は仕方がないところでもあるんですが……今回のヒロインがあんまビジュアル的に可愛くない。おさるっぽい。
というか主人公のコリン自身もそのへんにいる、やっぱりおさるっぽい顔の兄ちゃんみたいで、あんまカッコよくない(´・ω・`)
敵役のマルカスと、部下の女性はビジュアル的にはちょっとイイ感じなんだけど、結局やってることが小物臭のする悪漢レベルでしかないので、やっぱり魅力に欠ける。
どうにも面白くない脚本をどうにか面白くしようと頑張ったけどうまくいかなかった、という感じの仕上がりでした(´・ω・`)
決してアニメとしての完成度が低いわけではないと思うんだけど、『妖獣都市』や『バンパイアハンターD』の神がかった面白さとカッコ良さを期待して観てしまうと、満足度は低いかな、という印象。
とりあえず今作のことは水に流して(笑)、続編を作ってるとだいぶん前から予告動画も公開されているのに一向にその後の話を聞かない『獣兵衛忍風帳』の新作を心待ちにすることにします……(´-ω-)トオイメ